
彼の腕の中にいるのに、心はどこか冷めていた。
「愛されてるはずなのに、どうして?」
夜が来るたび、私は同じ問いを繰り返す。彼は優しいし、私のことを大切にしてくれている。でも――なぜか、何も感じない。求められることが嬉しくないわけじゃない。むしろ、彼の愛情は伝わってくるのに、身体の奥から熱が湧き上がることはない。ただ、彼に抱かれながら、淡々と時間が過ぎていくだけ。
これって、私だけ? みんな、本当にあんなに気持ちいいものなの?
友達に相談してみようかとも思った。でも、正直に話せる自信がない。「彼とのセックスが気持ちよくない」なんて、口にしたら「相性が悪いんじゃない?」って言われるかもしれない。それとも、私に問題があるの?
そんなモヤモヤを抱えたまま、ネットで検索してみた。すると、私と同じ悩みを抱える人が意外と多いことに驚いた。
「感じないのは、愛が足りないせいじゃない」
ある記事のその言葉が、私の胸に刺さった。
セックスって、気持ちよくなるためのものじゃなくて、心と身体のコミュニケーション。そう書かれていた。
私は、いつから彼との時間を「気持ちよくなるべきもの」と考えるようになったんだろう? もしかしたら、「感じなきゃいけない」「彼を満足させなきゃいけない」って、自分で自分を縛っていたのかもしれない。
じゃあ、どうしたらいいんだろう?
答えは意外なほどシンプルだった。
「自分の心と身体に素直になること」
たとえば、彼と触れ合うとき、自分が本当に心地よいと感じる瞬間を探してみる。無理に盛り上がろうとしなくてもいい。ただ、彼の指先の温度や、唇が触れる感触をゆっくり味わってみる。
そして、大切なのは「伝えること」。彼が求めてくれるのは嬉しい。でも、私はこういう触れ方が好きとか、もっとゆっくりしてほしいとか、自分の気持ちを言葉にしてみる。セックスは二人でするものだから、遠慮なんて必要ない。
もしかしたら、すぐには変わらないかもしれない。でも、少しずつでも、自分の心と身体を大切にできるようになったら、きっと彼との時間も変わってくるんじゃないかな。